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<審判・失踪者>松本修 演出ノート ~後編~

本作、構成・演出の松本修さんによる演出ノート後編です!

今回は以下の3つについて書いていただきました。

   【長期のワークショップ、劇場で作るということ】

   【交互上演であること】

   【カフカについて】

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【長期のワークショップ、劇場で作るということ】

この数年間、カフカの長編小説のような膨大なテキストを、これだけの多人数で、いわゆる戯曲というものを先行させずに舞台化するという作業を、『アメリカ』、『城』そして今回の『審判』と連続して行っている。最初に戯曲として完成させ、それに対して配役し、稽古をするという一般的な方法を、なぜ私はとらないのであろうか。それは第一に、俳優の持つ可能性を限定してしまうからである。ワークショップの期間中、俳優は多くの役を演じ、同時に多くの違った演じ方を体験する。一見、非効率的に思えるが、俳優にとって様々な役を体験し、他の俳優の違った役作りを見聞きすることは非常に創造的であり、刺激的な体験となる。さらにはこのプロセスを経ることにより集団としての共通の身体表現(アンサンブル)が醸成されてくる。第二に、それらの作業を指揮し、試みることは、演出家にとって多くの選択肢を持つこととなり、演出の可能性を広げることとなる。また、この間に、舞台美術、照明、音楽、制作などのスタッフもプランを長考できるという利点もある。ただし、これらの作業には時間と稽古場が確保されなければならず、つまりは経済的な基盤がないと困難であり、わが国の演劇界においてはいわゆる公共劇場でしか実現の可能性はないと考える。試行錯誤(つまりはそれが創造行為である)ができる現場が、劇場である。

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    *7月の創作ワークショップより

    
    
    

【交互上演であること】

ひとつの劇場で、同じ作家の違う作品を、同一キャストで交互上演するという今回の企画によって、私が目論見たいのは以下のことである。

①演劇の魅力の再確認。同じスタッフ・キャストが、まったく別の作品を作り上げるという現場を観客と共有する。また、劇場空間が短時間の間に変容することの、驚きと喜びを観客が体験する。

②カフカ作品の持つ異なった魅力を観客に伝える。底に流れている根本的なモチーフやテーマは当然のことながら共通しているが、カフカが作品によって違うアプローチの仕方をしていることを明確にしたい。また、それはテキストに対する演出家のアプローチの仕方の違いでもある。『失踪者』は祝祭的な群集劇として、『審判』はシンプルな動きの台詞劇として表現したい。


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    *「アメリカ」初演(01) 撮影宮内勝

    
    
    

【カフカについて】

これほど多くの研究・学術書や評論が書かれている現代作家はそう多くはないと思う。カフカの小説の解釈や評価については、それらの著作に任せたい。
私のカフカに対する態度(距離感)は舞台そのものに表現されているだろう。むしろ私は多くの異なった感想や評価が生れるような「多面体の魅力」とでも言うべき舞台を作り出したい。読む度に違った相貌を見せるというのがカフカの魅力だと思っている。少なくとも、独自の読みや解釈を前面に押し出す演出を私は好まない。

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                              松本修

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原作:フランツ・カフカ(Franz Kafka)

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1883年、旧オーストリア帝国領土ボヘミア(現在のチェコの首都)プラハにユダヤ系の商人の子として生まれる。プラハ大学で法学を専攻した後、半官半民の労働者災害保険局に勤務。以降、小説執筆との二重生活が始まる。1912年、長編「アメリカ(失踪者)」の執筆開始。1915年「変身」1916年「判決」刊行。1917年には肺結核を患い、その後、療養地と保険局を行き来するようになる。1922年、療養先で長編「城」の執筆にとりかかるが、1924年に入り、病状が急激に悪化、同年4月ウィーン郊外のキールリング・サナトリウムで死去。享年40歳。
カフカの死後、友人ブロートの手により未完の長編三作品「アメリカ(失踪者)」「審判」「城」が相次いで出版された。

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2007年10月05日 15:17に投稿されたエントリーのページです。

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