『国盗人』- W.シェイクスピア「リチャード三世」より
鑑賞日:12月9日(水) 14:00~
男性
「こんなに、親しみやすいとは」
観劇を終わっての感想です。シェイクスピアの原作を尊重しながら、新しいリチャード三世を表現していました。日本の古典芸能である狂言の所作を取り入れながら演出したところに萬斎さんの芸術志向を感じました。21世紀のシェイクスピア劇はそれもあり、原作の設定にとらわれない新しい挑戦でした。

撮影=久家靖秀
原作は、「薔薇戦争」という中世イギリスの内乱が背景になっています。今回の演出もそのことをベースにしながらも、日本版仕立てのものになっていました。リチャード三世が悪三郎に変身し、奸計を用いて国王まで上り詰めていく、そして終焉を迎える。「人は誰しも夢を見る」たしかにそうです。王の座を掌握した悪三郎が、断末魔として訴える「馬じゃ、馬じゃ、馬をよこせば国をくれてやる!」が夢のはかなさを表象していました。
リメイクされた「国盗人」を2回見ました。キャストの皆さんが真剣勝負なら、見る側も演技する人たちとガチンコ勝負してみたいと思ったのです。イギリスの演劇界では、アイディア先行の芝居作りは慎むべきとのコメントをある解説書で読みましたが、原作の精神を逸脱しなければ、シェイクスピアの作品を分かりやすく咀嚼してもらっていいと思います。
そして、メインディッシュを美味にするためには、主役を引き立たせる副菜も大切です。今回のお芝居でも、共演者のそれぞれが入魂してその役目を務めていました。舞台に息を吹き込ませるお囃子が、リズミカルな曲調で進行を助演していました。1人で4役をこなしていた白石加代子さんの練成された台詞まわしに魅了されました。久秀を演じた石田幸雄さんには枯れた味がタップリです。
大人にも子どもにもわかりやすく観劇できるお芝居だったと思います。終演後、観客から送られた雷鳴のような拍手がそれを語っていました。
イギリスの史劇を世田谷のパブリックシアターまで引き寄せてくれた萬斎さんにブラボーです。
