鑑賞日:3月14日(日) 14:00~
男性
野村萬斎さんの構成・演出そしてご本人の出演ありの「マクベス」を観劇しました。萬斎さんがあたため続けてきた企画には、試行を繰り返しながらたどり着いた形跡を感じました。それにしても、シェイクスピアの戯曲は懐が深いことを感じさせてくれます。
「マクベス」は四大悲劇のひとつですが、簡潔な言葉をもって表現する人間の心理と陰翳は、読む者、見る者を不思議な領域に連れて行ってくれます。
撮影=石川純
「国盗人」(日本版リチャード3世)のときは、演出のなかに狂言や能の手法がかぶせられていたようでした。今回のマクベスは、少し俯瞰した視点で、原作に沿って人間の悲劇性を浮き彫りにしていました。それでも私は、あの丸くそして回る舞台の背面に、能の幻影を見た気がしたのです。バーナムの森が攻めてくる最終シーン、紅色の落葉にそれらしい情趣を垣間見ました。春宵の舞台で、能楽師・狂言師が遠く行く先を見つめている、そんな錯覚でした。
的外れな要望かもしれませんが、萬斎さんにはこれからも、原作と葛藤してほしい、そして切り開いてほしいと思うのです。マクベスへのこだわりが、分裂と融合を繰り返し、更なるエネルギーを抱えて昇華していくのでは。そのとき、萬斎さんが演じるマクベスがどう変化しているか、そこに期待がふくらみます。
観劇を終えた後、しばらく心の沈黙が続きました。裏を返せば、それだけ今回の作品が傑作であったということかもしれません。このお芝居が海外でどのように受けとめられるか、私なりの関心のひとつです。
邯鄲の夢とは一炊の夢と同じ意味です。マクベスも魔女にそそのかされて邯鄲の夢をみたのではないでしょうか。私自身は邯鄲の夢ではなく、演劇未来という夢を持ち続けたいと思いました。

